俺は滑ってこけた。何の比喩でもなく滑ってこけた。
性別が入れ替わることもなく、時をかけるわけでもなく、
俺ともあろうものが単に雨でぬれた階段に足を滑らした。
神を恨んだ。
右足を下の段につけようとした瞬間に左足を滑らせたので、両足が前に出た格好になる。
一瞬の反応で、体を横にそらし階段に手をつき、そのまま階段を滑り落ちていくことを避けた。
腰と足を強打するも、あまりひどいことにはならなかった。
いててと顔を上げてみると、忌み嫌っている人間達の無数の黒い顔。
その人間たちは何か珍しいものを見ているかのように俺を見つめていた。
俺は二つのことに腹を立てていた。
一つは、足を滑らせてしまった自分の身体への怒り
一つは、こんな時だけ周りをみるんじゃねーよ、という人間どもへの怒り。
こけた俺を見るならば、偶にはお前らも見られることを意識して行動しやがれと、言ってやりたくなる。云々。
しかし、この怒りも明日にはさらに倍でドンで返せるのである。
昨夜必死に階段の害悪についてのレポートを書いたのだ。捏造ながら整合性はばっちりだ。
父である神は出来の悪い息子の仕事に泣いて喜んでいた、馬鹿だなぁ。
経緯を省いて結論を言えば、このレポートは認められ、今俺の目の前には世の中のすべての階段から段がなくなる装置がある。
このボタンを押せば装置が作動しすべての階段が平らになるのだ。
くだらない人間共がつるつる滑っていく姿が今から楽しみである。
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後から要素を足したら、変な文章になった。うんこ。