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日直地獄

小学校では事件が起きる

日直物語(2)

社会 作文

男子全員欠席事件

1学期が終了し、楽しい楽しい夏休みが終わり、また学園のアイドル【しょうこちゃん】と素晴らしい共同作業が始まる…はずだった。

始業前、クラスの男子(6‐3)の男子全員が校門前に一同に介していた。表情は一様に薄笑いをたたえ、一見朗らかに見えてその実、空気はどんよりと重苦しいものであった。それはいかに級友を出し抜くかを考えながらも、誰かが卑怯なことをすれば一斉に全員で叩いてやるというコンセンサスに基づくものであったろう。
校舎の時計塔を眺めながら、一人の男が言った。
「それじゃ…いくか…」
「おう」「おう」


教室に入って異変に気がついたのは男子委員長のノブオだった。
(あれ…?しょうこちゃんがいない…)
しょうこちゃんは、5年間皆勤賞という元気っ子で、学校を休むなんてことは考えられなかった。
今はまだ8時25分。まだ来る可能性はあるがしかし…。
ノブオの一瞬の硬直を敏感に察知した周囲の男子は、しょうこちゃんの席の異変に気がついた。そしてその反応は次々と広がり、そのどよめきは大きなうねりとなりあっという間にクラス全体を包んだ。

しかしそのどよめきは長くは続かなかった。
「しょうこちゃんが」「休んだ。」「つまり」「つまり」「今日のプリントを」「誰かが」「届けるということっ……!!」
このころになると2の手3の手は当たり前になっており、早くも読み合い騙し合いの空中戦が展開されていたのである。

その戦いは、朝の会が始まっても続いていた。

「俺が」「僕が」「プリントを」「今日は」「事故と見せかけて」「持っていく」「日直に指名されたら」「どこに逃げるか」「コッぺパン」「……引っ越しました。」「して…え?」「え?」
その瞬間、空中で交錯していた6-3男子のやかましい思考は地震直前の海岸のようにサササと引いていった。
「あ、あの、先生。今なんておっしゃいました?」
「しょうこちゃんは引っ越しました、といいました。あんた馬鹿に丁寧な言葉でしゃべるわね…。どうしたの?ちょっと聞いてるのたかし君。もしもーし。もう!反応がないわね、まあいいわ。」
クラスの男子の思考は完全に停止していた。

先生は続けた。
「あっ、それから今日の日直決めないとね。そうね今日はたかし君とー、そうねー9月1日だからー、9から1を引いて、出席番号8番の中村さんにお願いしようかしら。」
男子の背筋が一斉に伸びた。
たかしは声を裏がえらせながら叫んだ。
「せせせせ先生!その9から1を引くという計算には何の根拠も論理もありません!撤回を要求します!」
「残念!異議は受け付けません!」「鬼っ!悪魔!」
中村さん。そのあまりにも凶悪な性格と強靭な肉体は全校生徒から恐れられており、名前を口に出すのさえ忌避されていた。通称はナンバー8。


たかしが必至にあがいている間、クラスの空中ではたかしの葬式がしめやかに執り行われていた。

(つづく)