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日直地獄

小学校では事件が起きる

日直物語(3)

国語 作文

男子全員欠席事件(2)

放課後、男子は示し合わせたように、全員トイレに集まっていた。もちろん、示し合わせたわけではなく、ナンバー8の悪虐非道ぷりを目の当たりにし、全員が全員ともしょんべんをちびっていたからである。ヒロシ(理科委員)が流しで下半身丸出しでブリーフを洗いながら言った。

「これは大変なことになったなあ。女子ども、完全に増長してやがる」
となりでリュウジ(体育委員)もまた下半身丸出しで、トランクスを洗いながら言った。
「いや、困ったぜ。ああまで凶暴になるもんかね」
「男子一丸となって戦わねばもうこれはいかんともならんな」
「しかしなあ……クラスをまとめるはずのもうあいつはもう使いものにならんぜ」
リュウジは親指を立てクイとトイレの奥を指さした。

奥ではタカシ(裏番)が和式の便器で糞便にまみれたパンツを洗っていた。小さな声で何かをつぶやきながら同じ動作を繰り返す様子は屍人のようであった。
「再起不能だな」
ヒロシがポツリといったその言葉と、タカシが繰り返す動作は男子全員の思考を一気に現実に引き戻すのに十分であり、もう彼らには自分の身を守るだけの現実しか残されていないことに自覚した。
追い打ちをかけるように、明日日直の予定のシンイチ(飼育委員)の様子がおかしくなった。ガタガタ震え出し、洗い終えたばかりのびちょびちょのパンツを裏っ返しにはいていた。自ずと男子全員の視線が彼に集まった。その視線に耐えかねたように彼はそのままトイレから走り出た。
その様子をみてクラス男子(‐2)は、自分が明日からどう動くべきかをはっきりと理解した。そして、その日はそのまま無言の解散となった。



次の日、クラスの男子全員の祖父母が死んだ。次の日は残りの片方が。そんな調子で、どんどん親族が死んでいった。もちろん、今生きている親族の数には限界がある。死んでしまった人間を理由に忌引きすることはできない。だから彼らは時間の方を変更した。親族が足りなくなれば一世代時間を遡らせた。一日が経過するごとにどんどん時代が遡っていった。気がつけば時代は江戸中期。場所は寺子屋。
そんな事態になっても彼らは時間を維持すべく頑張った。その努力は相当なものであっただろう。

そんなある時、ヒロシ宅から狼煙が上がった。解読して曰く、
「トモオ(図書委員)がやられた」

リュウジは一瞬で事態を理解し、叫んだ。
「ばかな。江戸時代は男尊女卑社会と授業で習ったのに!」
障子を次々とぶち破りながら叫んだ。
「まだ女子の圧政は続いているというのか!」

(つづく)