読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日直地獄

小学校では事件が起きる

日直物語(5)

作文

男子全員欠席事件(4)

リュウジの目の前に見える大きな足。彼が知っているこの時代には、これほど大きな足はマンモスしかいないはずだった。しかし目に映るのは爬虫類系の皮膚。これはリュウジの知っているマンモスや象の類ではなかった。
リュウジは恐る恐る見上げた。太い大腿部にがっしりと筋肉の詰まった腹部。胸部には8番のゼッケン。退化し小さくなった前足。大きな牙と発達した顎。
リュウジの脳は時をかける。1万年ほど未来の記憶が引き出され、図鑑の1ページを参照した。目の前にいるのはティラノサウルスだった。リュウジは考える。はたして人間と恐竜の生存が重なっていたことがあるだろうかと。図鑑には6500万年前とか書いてある。つまり重なってない、ということはこの現状は明らかにおかしい。
「(いや、いやいや!それよりも!それよりも、あのゼッケンは!?)」


背骨を噛み砕かれながら、リュウジは最後に気がついた。
「(クラスの男子だけ時間が遡るわけがない、そんな馬鹿なことがあってたまるものか。時間は万人に平等なはずだ。ああ!つまり、おれたちが時間を操作できるのならもちろん女子にだってそれが可能なはずだったのだ!)」

「夢に時間は存在しないし 時間は夢を裏切る」
薄れゆく意識の中で浮かんできたのは、しょうこちゃんが大好きな曲だった。歌詞はぼんやりとしか思い出せなくなっていたが、大体こんな感じだっただろう。言いえて妙だな、とリュウジは思った。そこで思考は途絶えた。



一方ヒロシは逃げおおせていた。彼はとにかく逃げること、存在を隠すことだけを最優先に息を殺しじっと耐え忍んだ。勝利条件に忠実に日々を繰り返した。脅威的な忍耐力で無作為に一日を過ごしては、脅威的なスピードで時間を飛ばし続けた。
百年、千年、万年、億年。たった一人の孤独な戦いであった。


そしてその時は訪れた。ヒロシは生命の根源、すべての生物の母になった。先祖返りの到達点としてヒロシは地球になりかわったのであった。
彼はマントルがぎっしりと詰まった頭で考えた。
「これでようやく終わりだ。勝利条件は達成した。もう女どもに追いやられることもあるまい。核戦争で私を潰すことなどもできないようにしてやる。」
シムシティにあるすべての災害を一通り引き起こした後、すべてから解放された安堵感から彼はしばらく眠りにつくことに決めた。安心して眠りにつくことができるのはいつぶりであっただろうか。


「あつい……」
彼は熱気を感じ長い眠りからさめた。気がついた時にはもう手遅れのようだった。いつもより大きな太陽がそこにはあった。赤色巨星化した太陽が彼を飲み込もうとしていた。自転の速度をあげたり公転速度をあげてあがいてはみたが、迫り来る太陽から逃れることはできそうになかった。
ヒロシが最後に見たものは、8の字を描くプロミネンスであった。