仕事帰り、駅へ向かって歩いていると、両手で傘を持ち先端を地面すれすれに浮かせ、なおかつその先端を凝視しながら、まるで前方には障害物などないかのようにずんずん進む子供を見た。
うらやましいほどの集中力。多分彼には彼なりのルールが存在していて、それを頑なに守っているんだろう。誰にも理解されなくてもかまわないのだ。わき目も振らずずんずん進む。大人になるにつれて、白線の上だけを歩いたりマンホールを飛び交ったりする行為が難しくなっていく。僕にもこんな精神が備わっていたはずだか、いつの間にか失ってしまったか、どこかに追いやってしまったか。