男子全員欠席事件(3)
おひさまは常に東から上り西に沈んでいく。日没、それは彼らが一日を乗り越えた証。その証の収集こそが彼らの勝利条件だと考えていた。時を遡るごとに筋肉質の男性性の重みが増すはず、時間を遡った果てにある勝利を信じて一日一日を過ごしていた。
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ヒロシが目の前に並んだしゃれこうべを鹿の大腿骨でコツコツ叩きながら言った。
「みんな死んじまったな…」
リュウジは大きな黒い石と石をぶつけながら言った。
「あいつらは立派だった…っぜ!」
ヒロシの情けない声が聞くに耐えず、わざと大きな声で言い放ち強く石を打ち鳴らした。
「うん…」
そんなリュウジの心を察し、ヒロシは目の前のしゃれこうべに目を落とし黙こくった。
リュウジが叩き続ける石からは手のひらほどの大きさの石が次々と生み出されていた。割れた石は日本刀のように鋭利で、黒く鈍く光る黒曜石はまさに打製石器であった。
コツコツ、カツーン!コツコツ、カツーン!いつ終わるともなくつづく音の中で、ヒロシはふと音とリズムの乱れを感じた。顔をあげ、リュウジの顔を覗いてみると彼は涙を流していた。彼の涙は始めてみる姿だった。きつく歯を食い縛り、涙を流すまいとする表情は悔しさを石に叩きつけているように見えた。
その様子をみて、ヒロシはいてもたってもいられず、紐で貝を通したものを取り出した。それを首にかけシャカシャカならし、そのまま立ち上がり後ろの貝塚からクラスメイトのしゃれこうべを取り出しずらりと並べた。
ヒロシはしゃれこうべを叩いた。涙は止まらなかった。
ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ、ぽこ「ノブオ!いい音してるぜ!タカシ!高音がクリア!シンイチは低音に迫力!」
その咆哮と叩きだされるリズムは二人の境界を簡単にぶち壊した。
「鎮魂歌だ!」
二人のセッションは朝まで続いた。この日は二人にとって久しぶりの安息日となった。
(つづく)